10周年記念 メンバーソロ対談企画 10周年特別企画としてメンバー個々がチョイスした対談企画が実現!!

Vol.5

大介×マーティ・フリードマン

大介「デビュー10周年のスペシャル企画で、メンバーひとりひとりが自分の一番会いたい人と対談をすることになりまして」
マーティ「えーっ、それが僕なの?!(喜)」
大介「ハイ。僕、17歳の時に初めてメガデスのライヴを観たんですね。当時、メガデスのコピーバンドを組んでた仲間と行ったから、ピョンピョン飛んで大盛り上がりしてて。そしたら最後に僕ら目掛けてスティックを投げてくれて、パシッと取って、んもう大騒ぎして、未だにそのライヴは忘れらんなくて」
マーティ「あははは。けどよくこんなに真面目なバンドになったね。素晴らしい」
大介「(笑)。Aqua Timezってロックな部分もありつつ、やっぱりポップミュージックで。けど僕自身のルーツはヘヴィメタルなんです。メガデス、メタリカ、パンテラ。影響を受けた3大バンドのおひとりであるマーティさんが幸運にも日本に住んでいらっしゃるということで、こんな機会がなければ絶対に会えない!と思ってお願いしてしまいました。今日は本当にありがとうございます」
マーティ「こちらこそ、とっても嬉しい」
大介「日本にはいついらしたんですか?」
マーティ「大体10年前です」
大介「きっかけはなんだったんでしょう?」
マーティ「邦楽が好きだから。日本へはずっと洋楽アーティストとして来てたじゃないですか。でも僕が興味があったのは日本の音楽で、聴いていたのもほぼ100%邦楽でした」

――― 向こうに住んでいらっしゃる時から?

マーティ「そうそう。車に乗ってる時もずーっと聴いてて。なのにアメリカに住んでるのアホじゃん。日本なら邦楽聴き放題だし、やり放題だし、当たり前のように、日本に住むしかないじゃん!って。日本語が趣味だったからある程度喋れたし、なんとかなるんじゃない?と思って日本に来たんですよ」
大介「すごいなぁ(驚愕)。僕は逆に、洋楽しか聴いてなかったんです」
マーティ「そのほうが不思議ですよ。Aqua Timezには洋楽の味ゼロだよね〜、いい意味で! ヘヴィメタルの要素があるのにこの音楽が生まれるって、やっぱりどこかに邦楽の影響が入ってるんじゃないですか?」
大介「僕らが10代の頃って必死に洋楽を聴いてたけど、ビーイング系や小室サウンド、'90年代J-POPが勝手に耳に入ってきて。どれも完成された音楽だし、いいメロディだから、無意識に口ずさんでいたんですよね」
マーティ「そうそうそう、まったく同じ。その理由で日本に来たんですから」
大介「だから8割はメガデス、2割はB'zやWANDSも聴いて、みたいな(照)。そうすると、日本のバンドとしてアウトプットしようとした時に、その2割のルーツが強烈に前へ出てくるんですよ」
マーティ「ふぅぅん。曲にもっとヘヴィなニュアンスを入れようとは思いませんか?」
大介「たまに入れるんだけど、シングルではなかなかやらせてもらえないですよねぇ」

マーティ・フリードマン

マーティ「ハハハハ。それは超わかる! だから別の角度で入れてるんだよね。対談前に聴かせてもらった配信3部作、超気に入ってるんです。"シンガロング"っていう曲が特に好きで。決してヘヴィメタルのリフじゃないんだけど、ヘヴィメタルの魂が伝わってくるというか。"ジャンジャンジャンジャン"って強めに刻んだ8ビートからパワーを出しつつ、同時にメロディをしっかり支えていて。だからこう、Aqua Timezがいきなりゴリゴリのリフとかキンキンのソロを入れたら、何コレ?!って引いちゃうかもしんないけども、知らないうちにポップファンがメタルを聴いてるっていう感じで面白かった」
大介「あぁ、確かに。"シングロング"のAメロのギターはもう、レコーディングでも完全に頭を振りまくって弾いてましたよね」
マーティ「ライヴの時も飛びまくってるんじゃないの?っていう音だったもん」
大介「あはははは。そうですそうです」
マーティ「それも邦楽が大好きな理由のひとつですよ。ポップでも、ロックと同じくらいのエネルギーを、いや、むしろより強いパワーが出せるじゃないですか。洋楽のポップは全然違う。R&Bやラップ、もしくはカントリーの要素が強くって、そんなに元気が出る音楽と思わない。もちろんいい曲はいっぱいあるけど、日本のポップミュージックとは勝負にならないと思いますね」
大介「なるほど。最近はアイドルの方とも一緒にやられてますよね?」
マーティ「それも同じ理由ですね。アイドルの音楽とJ-POPは解釈が違うだけで、内容は似てると思いますよ。ギタリストとして深く分析すると、コード進行とメロディのセンスはどれも歌謡曲ベース。それをギターサウンドに変換させて、ヴォーカルと歌詞でアイデンティティーが生まれている。だから"シンガロング"もメロディだけを取って別の歌詞を乗せて女の子に歌わせたら、素敵なアイドルの曲に属すると思う」
大介「うんうんうん。確かに」
マーティ「言い換えれば、日本では若い頃から大人のコードを使ってるんですよ。だって10代のアマチュアバンドでも、マイナーセブンスとか普通に出てくるし。けど向こうでは30歳過ぎないと無理なんだよね。ロックの解釈ではそういうコードは必要ないって理由で、ロック系のポップにもないんだよ」
大介「俺もメタルあがりだからわかります。最初はパワーコード以外弾けなかったし、弦なんて2本鳴らしゃあいいんだくらいに思ってたし。それが20歳過ぎた頃に、あっ、マイナーセンブンスってあるんだ!って」
マーティ「(笑)。あと日本の曲はメロディが長いね。サビも最初から最後まで複雑に展開していくけど、洋楽は意外と4小節の繰り返しのサビが多いから」
大介「でまた、僕たちの曲が長いんですよ。シングルはほとんど5分以上あるし」
マーティ「Aqua Timezの音楽には贅肉がないから大丈夫。しかも終わりに向けてちゃんとクライマックスになるじゃん。"シンガロング"も、ラスサビでヴォーカルがひとりになるでしょ? あれが気持ちいいのよ。もし3分の曲だったらあの効果は半減じゃないですか。あそこまでビルドアップしてくれると、キター!って嬉しくなるから」

大介

大介「そう言っていただけると、苦労の甲斐が(喜)。ウチらは毎回、どれだけ短くできるかの闘いなんですよね。ヴォーカルが歌詞とメロディを作るんで、伝えたい想いがいっぱいあるから、ものすごい分数になるんです。それを他のメンバーで、いかに飽きさせずに聴かせるか考えるっていう。例え渾身のギターソロを弾いたとしても、全カットとかね」
マーティ「あぁ。いいバンドアレンジだと思います。聴きながらいつも、全部必要だなって思うから。意味がない間奏とか、意味ないキメとか、まったくないもんね。」
大介「ありがとうございます。ちょっとギターに関するお話を聞いてもいいですか?」
マーティ「もちろん!」
大介「昔から思ってたんですけど、マーティさんのギターソロは他のギタリストと全然違っていて、オリエンタルな空気を感じるんですよね。今日お話をうかがって、聴いてきた音楽の蓄積が、言葉では表現し難い和の心みたいなものを生み出していたんだなぁって」
マーティ「うん。僕はティーンエイジャーの頃、既にけっこういいギタリストだったの。で、僕よりうまいやつはみんなジェフ・ベックとかヴァン・ヘイレンの方向に走ってて、でも僕は同じ道に行きたくなくって、ちょうどそのタイミングで演歌を発見しました」

――― どうやって演歌と出会ったのでしょう?

マーティ「ハワイに住んでた頃に、日本のラジオ局があったんですよ。当時、ゴリゴリのメタルのバンドをやってたから、耳が鳴りまくってる状態で家に帰る車の中で聴いてて。日本語はまったくわからなかったけど、言葉の響きにすごく癒されてたの。そして直感的に、演歌の歌い方、特にコブシを分析したら、他のジェフ・ベックなヤツらには到底理解できない武器になると思ったんです。実際、面白い音階も発見したし、フレージングセンスも違うものが生まれた。何より歌は心を掴む楽器だから、これぞと思うヴォーカリストを研究することは、テクニックではなく、心に訴えかけるギターになるというかね」
大介「やっぱりそういうことなんですね」
マーティ「そこで生まれた無意識の和の心。プラス、僕の考え方では、音楽はメロディがメイン。けどそれは邦楽の常識なんですよ。海外のうまいギタリストってフラッシーな、上手そうなフレーズ弾くんだけど。日本ではギターソロであろうとメロディを奏でてる。だからそんなにテクニカルには響かないんだけど、曲の気持ちをすごく大事に守っている。僕はエディ・ヴァンヘイレンみたいにずーっと弾きまくってるんじゃなくて、とても日本的な意識で弾いてると思いますね」
大介「それは高校生の時、当時のバンドメンバーで話し合っていて。"マーティのギターソロには、なぜこんなに流れがあるんだろう?"みたいな分析を一生懸命してたんです」
マーティ「その頃からですか?!」
大介「そうなんです。で、みんなでいろいろ考えて出した答えが、ビブラートの波形とフレージングが日本っぽいんだっていう。だから確かにヴァン・ヘイレンの速弾きは素晴らしいんですけど、それよりも断然頭に残るソロだったから、すごいなぁと思って」
マーティ「すっごく嬉しい! だからこう、僕も経験的に速弾きはいっぱいやったけど、"速弾きギタリスト"と言われると超ガッカリします。だって速叩きドラマーとか、早口ヴォーカルとか、それは完全に音楽の内容を無視したコメントだから」

――― 相手は褒め言葉のつもりでしょうけどね。

マーティ「そうそう。でも音楽家はみんなもっと幅広い武器を持っていて、そのメインは大介さんが言ってくれたように、メロディが耳に残るのはなぜか?って分析したくなるとか、音楽全体を守るようなギタープレイだったりするわけで。ギタリストにとって速弾きは確かに印象的ですよ。実際、速弾きと言われて喜ぶヤツが何人もいて。けどそことは一緒にしてほしくない。だから言われたら、なんとなーく聞き流してるんだけどさ」
大介「あはははは」
(つづく)

この対談の完全版は8月末発売予定のAqua Timez10周年記念アーティストブック「流るる風の跡を−Aqua Timez 10th Anniversary Book−」(シンコーミュージック・エンタテイメント発行)に掲載されます。

文 / 山本祥子 写真 / 山本さちこ 
編集協力 / B-PASS

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